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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(れ)491号 判決 1953年4月28日

主文

原判決中被告人今富清に関する部分を破棄する。

被告人今富清に対する本件公訴事実中物価統制令違反の罪につき同被告人を免訴する。

被告人今富清を懲役四月に処する。

同被告人に対し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

被告人其田国政に関する本件上告を棄却する。

理由

被告人今富清の上告趣意は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。しかし、職権をもって調査すると、同被告人に対する本件公訴事実中物価統制令違反の罪(原判決が一部訂正の上引用した第一審判決摘示第二の(イ)の事実)については、原判決の言渡後昭和二七年政令第一一七号大赦令により大赦があったので、刑訴施行法二条、三条の二、刑訴四一一条五号、旧刑訴四四八条により原判決中被告人今富清に関する部分を破棄し、当該被告事件について更に判決をすべく、右大赦にかかる罪につき旧刑訴四五五条、三六三条三号により同被告人を免訴し、その余の公訴事実については原判決の確定した同判示第五の(一)の事実に法令を適用すると同被告人の右判示所為は刑法一九八条、六〇条、昭和二二年法律第一二四号附則四項、改正前の刑法五五条(罰金等臨時措置法二条三条刑法六条一〇条)に該当するから、所定刑中懲役刑を選択し、その刑期範囲内において量刑処断し、刑の執行猶予につき同法二五条を適用して、同被告人に対し主文第一項乃至第四項のとおり判決する。

被告人其田国政の上告趣意は刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない(原判示のような輸送中の闇物資の摘発は省線日豊線杵築駅に勤務する警備掛(運輸事務官三級)としての被告人其田国政の職務に関渉し、これと、密接な関係を有することであるから、同被告人が原判示のように闇物資の輸送につきこれを黙認するように請託を受け賄賂を収受した以上、刑法一九七条一項後段の罪が成立する)。よって、刑訴施行法二条旧刑訴四四六条により同被告人に対し主文第五項のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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